シングルス / ストローク戦 / セオリー / やってはいけない配球

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シングルスにおけるベースライン同士の場合のプレースメントの復習

上図は、シングルスのベースライン同士のラリーのときのポジションによる基本的なプレースメントです。

「基本的なプレースメント」とは、状況別にボールの位置によってどこに立てばベターかということです。

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たとえば、下の図で左側コートの赤い四角の位置などから打つ場合、自分自身に余裕がない状況(defensive:ディフェンシブ)であれば、右側コートのセンター(相手コートの中央奥の赤い丸)へ深く返球するのが鉄則です。センターへ返すことで、相手に角度をつけられた厳しいボールを打たれるリスクを最小限に抑えることができます。

そこで、図の左側ピンクの位置でプレーしているプレーヤーは、「つなぐ」ポジションからはクロスに返球するのが基本です。または、相手がバックが苦手な場合はストレートでも構いませんが、相手の強いボールや低く滑ってくるボールを無理やりストレートに打つのはおすすめしません。

逆に、しっかりとボールに追いついて余裕がある状況(neutral:ニュートラル)であれば、クロスに「つなぐ」というのがセオリーになります。クロスへの返球は、ネットの低いところを通せる上にコートを対角線上に広く使えるため、ミスの確率を大幅に下げられるという大きなメリットがあります。

しかし、実際の試合で多くの一般プレーヤーがやってしまいがちなのが、「余裕がないにもかかわらず、一発逆転を狙ってストレート(ダウン・ザ・ライン)へ打ってしまう」というミスです。これが、今回のテーマである「やってはいけない配球」の代表例です。

ディフェンシブな状況でストレートへ打つことには、以下のような致命的なリスクが伴います。

  1. ネットの一番高いところを通さなければならないため、ネットミスの確率が跳ね上がる。
  2. 相手コートの直線距離は1.37m短いため、バックアウトしやすくなる。
  3. 少しでも振り遅れると、サイドアウトする。
  4. もしボールが浅くなった場合、相手にオープンコート(誰もいないスペース)へ簡単に打ち込まれ、一発でエースを取られる。

つまり、セオリーを無視した配球は、自分からピンチを招くだけでなく、相手を精神的にも優位に立たせてしまう原因になります。

では、なぜ「やってはいけない」と分かっている配球を、本番の試合でやってしまうのでしょうか?

その原因の多くは、ショットの「技術不足」ではなく、試合中の「状況判断のミス」や「メンタル(焦り)」にあります。ラリー中に一瞬でも「早くポイントを終わらせたい」「厳しいから一か八か狙おう」という思考が過ると、セオリーとは真逆の選択をして自滅してしまうのです。

テニスは一発の華やかなエースだけで勝つゲームではありません。まずはこの「状況に応じた正しいプレースメント」を徹底し、やってはいけない配球を確実に減らしていくこと。これこそが、シングルスで勝率を安定させるためのファーストステップになります。

よくあるケース

下図では、相手を少し崩せるかもしれないと考えストレートに打ちました。
返球後は、ボールの位置に対してややクロス寄りが正しいポジションになりますから、ピンクのプレーヤーの次のポイション取りは赤い位置になります。これはクロスに打つ場合よりおよそ1mほど遠いポジションです。そのポジションに相手が打つまでに移動します。このときストレートが甘くなってしまうと到達時間(相手のところに届く時間)はクロスに返球した場合より短くなります。

ストレートが少し甘くなった場合、右の紫プレーヤーはコートのベースラインより中に踏み込んでより鋭角にクロスを打ちます。

これが試合では、誰もが避けたい即死に近いケースです。

紫色プレーヤーからするとネットの低い所を通して、飛んできたコースに対して引っ張る方向にラケットを振るので、攻めのボールとしては難易度が低いです。

ピンクプレーヤーは、どんどん遠ざかっていくボールに対して走っていかなければならないので、20:80ほど不利になります。

これが「やってはいけない配球」です。

観戦のポイント

プロの試合で何度も続くクロスの打ち合いを見ることがあると思います。画面上ではストレートが空いているようにも見えます。それでもなかなかストレートを打たないのは打てる状態になるまでボールを慎重に選んでいるからです。

また、クロスに強打することで、コースを変えにくくさせています。球が遅ければ、プロは最低二通りコースを変える方法をもっていますから、相手にコースを変えるリスクを高める必要があります。

選手の性格や戦術にもよりますが、リスクを犯してすぐストレートに打つ選手と慎重にボールを選ぶ選手がいます。

前者は集中力も体力も多く使いますから、短命な選手が多い傾向だと思います。しかし、大物食いという魅力もあります。

coaching

その時々の世界チャンピオンのプレースタイルを、さも「最新の正しい技術」であるかのように教えるコーチは少なくありません。しかし、流行に流される前に、まずはどんなプレーにも必ずメリットとデメリットがあることを指導者が理解しておく必要があります。

かつて世界1位になったマルセロ・リオスという選手がいました。彼は絶妙なタイミングでコースを変え、カウンターを繰り出す天才肌のプレーヤーでした。当時、テニス雑誌やコーチたちはこぞって「これからはどんどんオープンコートへ展開するのがセオリーになる」と謳ったものです。確かに、その時々で目立つ選手を例に挙げると、瞬間的な説得力は生まれます。

しかし、テニスの基本のうち、時代とともにアップデートされた内容は2割程度に過ぎません。なぜなら、テニスコートの大きさも、ネットの高さも、ボールの反発力も、昔から変わっていないからです。

もちろん、変化に対応すべき点もあります。ラケットの剛性が飛躍的に高まったことや、ハードコートの球足の変化、ボールの重さなどは、基本や戦術・戦略に大きな影響を与えます。だからこそ指導者は、「目の前の生徒が普段どのコートで戦っているか(主戦場)」をまず確認すべきです。それによって、伝えるべき内容は変わるからです。

また、プロの寿命は10年ほどですが、ジュニアや一般のプレイヤーはその後10年、20年と長くテニスを続けます。その長い競技人生の間で、世界チャンピオンなど何人も入れ替わります。そのたびに自分のプレースタイルを振り回すわけにはいきません。先述のリオスも、トップの座にいた期間はごくわずかでした。

実際、一般の方の試合であれば、たとえ遅いボールであっても、確実にクロスへ深く返しておけば、ノータッチエースを決められることはほとんどありません。

一般の試合でよく見かけるのは、「フォアかバックのどちらかが壊滅的にミスが多い」というケースです。だからこそ、普段からクロスとストレートを自在に打ち分ける練習を重ね、対戦相手の弱点に応じて配球を柔軟に変えられるようにしておく。これこそが、どんなタイプの選手と対戦しても大崩れしない、「試合ムラのない強さ」を育てるための本質的なアプローチです。

倍速メソッド(✖︎2SPEED SYSTEM)

コーチによっては、「自分のテニスを貫くことができれば勝てる」という指導をする方もいます。何かに抜きん出た武器を持っていれば、この方法は間違いではありません。しかし、すべての選手がそのケースに該当するわけではありません。

ボクシングで例えるなら、強烈なパンチを持つ選手に、わざわざガードを固めて判定勝ちを狙わせるようなものです。では、一発のパンチ力を持たない標準的なボクサーが勝てないかというと、そんなことはありません。守りと攻め、状況判断、技術、スタミナなどをバランスよく磨いていけば、トップクラスの選手になることもできます。テニスもこれと同じです。なぜなら、テニスも相手と戦う「対戦競技」だからです。

だからこそ私は、その時々の流行に流されず、理にかなったことを教えるほうがよいと考えています。例えば、パワーテニスで勝つチャンピオンがいる時代には「パワーが良い」と教え、スライスで勝つチャンピオンがいれば「スライスが良い」と教えるような、場当たり的な指導はウケこそ良いかもしれませんが、それぞれの技術のメリット・デメリットを本質的に理解しているとは言えません。

そこで私は、このページに示したような「基本戦略」と「相手を攻略するための戦術」の両方を、2WAY方式として教えています。

私の考えでは、テニスが対戦ゲームである以上、「自分のテニスをすること」と「対戦相手にそのテニスをさせないこと」の両方が必要です。それに、そうした駆け引きがある「対戦ゲーム」としてのテニスのほうが、やっていて楽しいので長続きするものです。

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